0. この教材の使い方

はじめに

この教材は、PSI(Personalized System of Instruction: 個別化教授システム)方式の授業で使えるように開発しました。PSIは、基本的に自己ペースで学習していく方法ですので、独習用としても使えます。また、この教材を使ってPSI方式の授業をすることもできます。

独習しようとする方へ

独習する場合は、1章から順番に進めていきます。各章の最後に「通過テスト」がありますので、それを解くことで理解度を確認してください。通過テストがすんなり解けなかった場合は、前に戻って復習しましょう。途中の理解が中途半端ですと、先に行ってわからなくなる確率が高くなります。完全習得学習を目指してください。

もくじにある「実力テスト」は、現在のところ公開していません。また、通過テストの解答も、現在のところ公開しておりませんのでご了承ください。

授業をしようとする方へ

この教材を使って、PSI方式の授業を実施しようとする教員・担当者の方々のために、授業実施のポイントを以下に説明します。

PSI授業実施の環境

PSI方式の授業をする場合は、次のような環境が必要です。

まず、受講生1人に1台のパソコンが必要です。パソコンがネットワークにつながっていない場合は、CD-ROMの形の教材を配布すれば可能です。パソコンがネットワークにつながっているときは、LAN内のサーバに教材を置いておき、それを参照してもらうようにします。

次に、プロクター(指導員)は、受講生10人につき1人配置します。たとえば30人のクラスであれば、3人のプロクターをそろえます。プロクターの役割は、次に述べる通過テストの採点と質問への回答、アドバイスをすることですので、教員は、そうした仕事をこなせる能力を持ったプロクターを集める必要があります。大学であれば大学院生などに依頼しますが、企業では、すでにこの授業を受講して、優秀な成績を修めた人に依頼してもいいでしょう。

PSI授業の運営

PSI方式の授業は、伝統的なレクチャー型の授業とは異なり、教員はレクチャーをしません。すべて受講生の自己ペースによって学習を進めていきますので、最初に、受講生にPSI授業の進め方についてよく理解してもらうことが大切です。また、教員もPSI方式の授業の基本的な考え方(哲学)をよく認識しておくことが大切です。

PSI授業の進め方は、次のようです。

以下に、詳しく説明します。

第1に、PSIでは自分のペースで学習を進めていきます。ただし、成績をつけるための実力テストの期日は決まっていますので、それに間に合うように自分でコントロールしながら進めていくことが大切です。PSIの最大の弱点は、自己制御力のない受講生が学習を先延ばしにしてしまい、結局あきらめてしまう「延期問題」です。教員とプロクターは、このような受講生に対して、気にかけておき、適宜介入することが必要です。

第2に、完全習得学習を促すために通過テストを合格するまで受けるということです。受講生が単元の学習を終え、理解できたと思ったら、通過テストを受けることができます。通過テストは授業時間中に、プロクターに申し出れば受けることができます。プロクターは、1対1で通過テストの解答を確認し、間違えているところがあれば、それを指摘します。通過テストでは点数をつけません。何度でも繰り返し受けることができ、全問正解でその単元をクリアしたと認めます。このときに各受講生に進度カードを配布しておくと良いでしょう。通過テストクリアの印をそのカードに書き込みます。通過テストで合格すれば次の単元の学習に進むことができます。

第3に、実力テストによって成績をつけるということです。通過テストはあくまでも完全習得学習を保証するための手段ですので点数をつけません。点数をつけるのは実力テストです。通常、実力テストは期日をきめておき、一斉に行います。したがって、その期日までに所定の単元の通過テストをすべてクリアしておくことが必要です。その条件を満たさない受講生には実力テストを受けさせるべきではありません。

まとめると、PSI方式の授業の哲学は、「受講生1人1人は、理解の速度も、理解の仕方も個人差がある。よく設計された教材を用意し、それを自己ペースで進め、必要があればプロクターが援助し、通過テストによって完全習得学習を確認していくことによって、確実な学習が保証される」ということになります。

通過テスト・実力テストについて

通過テストの解答については、現在のところ公開しておりませんので、ご了承ください。また、現在公開されている通過テストの問題については、受講生の専門領域によってより適切な問題に差し替えた方がよい場合があります。

実力テストの問題については、現在のところ公開しておりません。実力テストに関しても、受講生の専門領域に近い問題を教員が作成するのがよいでしょう。

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