3.4 標本数による限界値

───三ヶ島先輩、標本数が20個のとき、5%有意水準での限界値が0.444ということはわかりました。でも、標本数はいつでも20個というわけではないですよね。

「そうだね。たった5個の標本のときもあるだろうし、300個の標本の時だってあるだろう」

───そうすると、そのときの限界値を知るためにはどうしたらいいんですか?

「そのために、標本数別の限界値を示した便利な表がある。統計学の本を見れば、たいてい載っているよ。こんな感じだ(南風原朝和『心理統計学の基礎』有斐閣より抜粋)」

標本数
5%有意水準
1%有意水準
3
0.997
1.000
4
0.950
0.990
5
0.878
0.959
6
0.811
0.917
7
0.754
0.875
8
0.707
0.834
9
0.666
0.798
10
0.632
0.765
11
0.602
0.735
12
0.576
0.708
13
0.553
0.684
14
0.532
0.661
15
0.514
0.641
16
0.497
0.623
17
0.482
0.606
18
0.468
0.590
19
0.456
0.575
20
0.444
0.561
30
0.361
0.463
40
0.312
0.403
50
0.279
0.361
60
0.254
0.330
70
0.235
0.306
80
0.220
0.286
90
0.207
0.270
100
0.197
0.256
200
0.139
0.182
300
0.113
0.149
400
0.098
0.129

限界値の表から気がつくこと

───先輩、途中で標本数がとんでますよ。20個から先は10個単位になってるし、100個から先は100個単位になっています。

「全部書くと、大きな表になってしまうので、途中を省略しているんだ。半端な個数でも、その間を見ればいいわけだから、実用上は問題ないと思うよ」

───うーん。この表を見ると、標本数5個のときの5%有意水準での限界値は、0.878ですね。つまり、これより大きい相関係数じゃないと、有意にならないんですね。

「そうだね」

───でも、前に習ったことによれば、0.878という相関係数そのものは「強い相関」ということですよ。強い相関なのに有意じゃないということはおかしいんじゃないですか。

「いや、おかしくないんだ。「強い相関」という言い回しはあくまでも便宜的なものだ。標本数がある程度あるときのね。でも、標本数5というような少ない場合は、相関係数が大きくても有意にならないということなんだよ」

───あれ? 逆に、標本数400なら、限界値は0.098ですよ。0.098なんていったら、ほとんどゼロに近いじゃないですか。言い回しも「ほとんど相関がない」と習ったし。

「そうなんだ。標本数を大きく取ると、相関係数が小さくても有意に出てしまうんだよ。これは無相関検定ではよく頭に入れておく必要がある」

───ふーむ。標本数によって、無相関検定の限界値は大きく変化するんですね。同じ0.4という相関係数が出たとしても、標本数が10の時と、100の時では意味が大きく違うと。なんとなくわかってきました。

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