8.2 固有値

───それじゃ、さっそく因子分析の計算の仕方を教えてください。Excelでできるんですよね?

「アイ子ちゃん、残念ながら、基本的なExcelでは、因子分析は計算できないんだ。いろいろな値を推定するために繰り返し計算が必要なので、かなり複雑な計算になるから」

───え? じゃあ、どうしたらいいんですか?

「因子分析を実行するためには、統計ソフトと呼ばれるアプリケーションソフトを使う必要がある。広く使われている統計ソフトとしては、SPSSやSASが有名だ。ただし個人で買うにはちょっと値段が高い。その他には、Excelのアドイン(付加的なプログラム)として統計ソフトが販売されている。また、最近ではWeb上で統計解析ができるようなサイトも出てきているよ」

───ふーん、統計ソフトを手に入れることが必要なのね。

ここでは、さっきの4種類のアイスクリームのデータを使って、実際に因子分析を実行しながら、説明していこう。

まず、相関行列から出したね。これだ。

次に「固有値」というものが計算される。

この固有値は、共通因子の数を決めるのに手がかりになる。

───共通因子の数は、はじめから決まってはいないんですか?

うん。決まっていないんだよ。さっきの図を見てみよう。

ここでは、ナッツ系に影響する共通因子と、チョコ系に影響する共通因子の合計2つを考えたけれども、これはあくまで仮説だ。共通因子は1つかもしれないし、3つかもしれないんだ。ただし、最大で4つだ。なぜならば観測変数が4つだから。

でも、観測変数の数と共通因子の数が同じでは、わざわざ共通因子を考えた意味がなくなってしまうよね。「できるだけ多くの観測変数をできるだけ少ない共通因子で説明しよう」とするのが因子分析だからね。

───その共通因子の数を決める手がかりが固有値というわけですね。

そうだ。

さっきの固有値を折れ線グラフにしてみよう。

共通因子の数を決めるための規準はいくつかあるけれども、ここでは「固有値の落ち方」を見る方法を説明しよう。

この折れ線グラフを見てわかるように、番号が大きくなるにつれて固有値はだんだん小さくなる。その落ち方をよく見ると、2番目の固有値と3番目の固有値を境にして傾きが急激に変わっているね。2から3への傾きは急だけど、3から4への傾きはなだらかになっている。

そこで、2つの共通因子を仮定する。残りは仮定しても大勢に影響はないと判断するわけだ。

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